ある都内の公立小学校の公開授業で「郷土愛・愛国心」をテーマとした道徳の授業が行われた。こういうテーマが取り上げられ、授業が公開されることは大変良いことである。また、これを実現するためには校長先生をはじめ先生方がひとつになって取り組まないとできないことであろう。


低学年では、身近なテーマ、たとえばお祭り、日本の自然、ふろしきなどを取り上げて、日本人としての自覚、日本の伝統文化の良い点を気付かせる授業が行われた。
高学年では、歴史上の人物を取り上げて授業が行われた。五年生では岡倉天心。六年生では新渡戸稲造。
岡倉天心は日本の伝統美術の優れた価値を認め、海外への流失を防ぎ、近代日本美術の発展に大きな功績を残した人物である。こうした先人の努力を知り、自分の郷土や国を愛そうとする心情を育てる授業が行われた。

ここで新渡戸稲造について詳しく紹介してみたい。
稲造は留学経験から日本の文化や風習がなかなか外国人に理解されていないことを知り「日本の文化を外国に伝え、外国の文化を日本に伝える太平洋の架け橋になりたい」と思うようになった。


ベルギーを訪れたとき、尊敬する学者から「日本の学校には宗教教育がない。それでどのようにして子孫に道徳教育を授けることができるのですか」と質問され、その時は答えることはできなかったが、以来、この問いは稲造の念頭を離れることはなかった。稲造はそれに答えようと、書き上げたのが英文の『武士道』(明治33年)であった。
その中で「武士道とは何か」「武士道の源を探る」「義|武士道の光り輝く最高の支柱」そして、義、仁、礼、誠、名誉など、日本人が大切にしてきた徳目を西洋の事績も豊富に引用しながら、武士道こそ日本人の道徳を形成したものであることを著した。


この本は、日本人の心を分かりやすく紹介しており、どんな国の人でも共感できると高い評価を受け、世界中で翻訳されてベストセラーになった。
発明家エジソン、米国大統領セオドア・ルーズベルトなども愛読していたことは有名な話。英文の名著『武士道』によって、稲造は「太平洋の架け橋たらん」とした若き日の志を果たしたのである。
その後、国際連盟の初代事務局次長としても活躍し、世界の平和と協力を求めて各国を講演して回り、「新渡戸稲造ほど世界の人々に深い感動を与えられる者はいない。まさに国際連盟の輝ける星」と言われるほど尊敬を集めた。おそらく国際人として世界に認められた初めての日本人と言えるだろう。


授業では、こうした新渡戸稲造の事績を紹介し、まず日本文化、精神をよく学び、そして外国の文化を理解し思いやりの心を持つ。その上で日本人としての自覚を持って世界の人々との親善に心がけることを子供たちは学んだ。
このような道徳の授業が行われていることに深い感動を覚えるとともに、子供の心に日本人としての自覚、誇りが芽生えることを期待したい。そして校長先生をはじめ先生方の努力に敬意を表したい。


こうした授業が当たり前に行われる社会に一日も早くなるようにするには、まず大人たちが変わらないといけないのだろう。