今回は「無悲鳴のしぐさ」についてご紹介したいと思います。
道を歩いていて思いがけない事に遭遇すると私たちは思わず大きな声を上げてしまいがちです。
しかし、江戸時代の人々は火事やひとに襲われるなどの非常時以外は、むやみに大きな声を出さないよう心がけていました。なぜなら、自分が驚いたからといって大きな声を出すと、二次災害を起こし他の人に迷惑をかけることになりかねないからです。
むやみに大きな声を出してはいけない
例えば、もし知っている人に町で会った時は、後ろからいきなり声を掛けてはいけませんでした。親しい間柄の人にでも声を掛けるときは、その人に追いついて同じ目線になって自分の正体を相手に明かしてから声を掛けたといいます。
このしぐさが生まれた由縁には当時は、現在と違い、明かりが十分でなく、町がとても暗かったことがあると思われます。しかし、街灯が十分ある今でも夜道を歩いているとドキッとすることがたまにあります。
それは、思いもしなかったところから聞こえてくる携帯電話で話している人の声です。他に誰もいないと思っていた道で急に大きな笑い声が聞こえてくると本当に肝が冷える感じがします。
私の知人で夜道を歩いていて、向うから青白く顔が照らされてこちらに向かってくる人をみて、「ついにノッペラぼうを見てしまった!」と思った人がいます。そのノッペラぼうの正体は、携帯電話のメールを見ている人でした。
その話を聞いた時は、思わず笑ってしまいましたが、それから随分たって自分も同じ場面に遭遇した時、心の中で心底驚き、その知人の心持ちが理解できたという皮肉?なエピソードがあります。
人から突然声を掛けられて驚くということは、こちらの心がどこか上の空で油断しているからともいえます。
日本は世界の中でも比較的、治安もよく平和な国柄といえます。一歩海の外へ出てみるとそれが先進国であろうと街を歩くだけでも命がけという国も少なくありません。平和な国に暮らしていると、人々のこころも気づかぬうちに緩んでしまいます。
昔の武士ではありませんが、常に心をしっかりと持ち、江戸時代の人々のように声を掛ける側も、掛けられる側も、驚いてもむやみに大きな声を出さず、スマートに対応できるようにしたいものです。