食事をするとき、必ずといっていいほど誰もが口にする言葉「いただきます」。
 この言葉には、食糧を作ってくれた農民への感謝の念と、食べ物を与えてくれた自然への畏敬の念が含まれています。普段何気なく言っている一言ですが、とても大事な一言です。江戸時代は、食べ物だけでなくすべてにおいて他者への感謝の念を持っていたといいます。これが、普通の感覚だったのです。
 欧米では「いただきます」の代わりに、宗教によってはお祈りをします。その内容は、まさしく前述のようなものに加え、その時々の状況によって、その場に合わせたお祈りをします。
 例えば、その日の夕食に遠路はるばる訪ねてきてくれたゲストがいたらその方がいることへの感謝の気持ちを加えるなどします。
感謝の気持ちを込めて
 こうして考えてみると食べ物や自然、人への感謝の気持ちという点では世界共通のようですね。
 最近は、「モンスターペアレント」という言葉がよく聞かれます。これは、子供を持つ親で常識では考えられないような理屈を並べ立て、自分や自分自身の子供を正当化するまるでモンスターのような親という意味のようですが、以前ニュースで耳にして驚いたエピソードがありました。
 それは、学校で給食を食べる時、自分の子供に「いただきます」と言わせるのは給食費を払っているのだからやめさせてほしいという、どう反応していいのかわからないような理屈を言った親の話です。
 お金を払っているから、「いただきます」を言わなくてよい。きっとこの親御さんは、「いただきます」の意味を本当には理解していなかったのでしょう。「いただきます」には、前述の意味のほかに、目の前にある料理を作ってくれた人に対する感謝の意味があります。
 それが、レストランならシェフ、家ならそれを作ってくれた家族、給食なら、給食を作ってくれた人に対してです。「いただきます」にも「ごちそうさま」にもそれぞれ同じ感謝の気持ちが込められているのです。
 これらはとても基本的な言葉ですが、深い意味を持っています。この意味を私たちは、確実に今育ちつつある子供たちに伝えていく役目があります。そして、意味を伝えるには、私たち自身がきちんときれいな響きでこの言葉を使っていく必要があります。
 食事の前には「いただきます」と気持ちを込めて言いたいものです。